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マウスピースが黄ばむ主な4つの原因

マウスピースは毎日使用するものだからこそ、清潔に保つことが大切です。しかし、適切なケアを怠ると黄ばみや汚れが目立ってきてしまいます。
透明で目立ちにくいはずのマウスピースが黄ばんでしまうと、せっかくの審美性が損なわれてしまいますよね。
マウスピースが黄ばむ原因は主に次の4つです。それぞれの原因を理解することで、効果的な対策が可能になります。
1. 食べかすの付着
食事の際にマウスピースを外すのは、食べ物の残りかすが装置に付着することを避けるためです。しかし、歯を磨かずにそのまま再装着してしまうと、食後に残った食べかすによってマウスピースが汚れてしまいます。
さらに、汚れや細菌が付着したマウスピースを装着し続けると、それらが歯に密着し、虫歯や歯周病のリスクを高める可能性もあるのです。
2. 色の濃い飲み物による着色
マウスピースはポリウレタンなどのプラスチック素材で作られています。素材の性質上、飲み物に含まれる色素による着色汚れが発生しやすいのが特徴です。
特に赤ワイン、コーヒー、お茶類(ウーロン茶や紅茶など)といった色の濃い飲料は、マウスピースにステインを残しやすく注意が必要です。
「ストローを使えば大丈夫」と考える方もいますが、液体は口内に広がりやすいため、ストローを使用してもマウスピースに色が付着し、黄ばみや汚れとして残ることがあります。
3. 唾液によるミネラル成分の沈着
マウスピースは口腔内に装着するため、唾液が付着しやすくなります。唾液にはミネラル成分が含まれており、マウスピースに蓄積すると時間がたつにつれて歯石のような沈着物が形成されるのです。
その結果、マウスピースが白く濁る現象が見られ、長期間放置すると見た目の汚れだけでなく不快な臭いの原因にもなります。
4. タバコのヤニ
タバコのニコチンやタールは、マウスピースを簡単に変色させます。喫煙者の方は特に注意が必要です。
タバコを吸う際はマウスピースを必ず取り外し、喫煙後には歯磨きをすることが、マウスピースの美しさを保つ上で重要です。これにより、変色を効果的に防ぐことができます。
マウスピースの黄ばみを落とす5つの効果的な方法
マウスピースの黄ばみが気になりはじめたら、早めのケアが大切です。ここからは、私が歯科医として実際に患者さんにお勧めしている効果的な黄ばみの落とし方を5つご紹介します。
それぞれの方法には特徴がありますので、黄ばみの程度や手持ちの洗浄道具に合わせて選んでみてください。
1. 歯ブラシでの基本的なブラッシング
最も手軽な方法は、歯ブラシを使った基本的なブラッシングです。普段使っている歯ブラシとは別のものを用意し、マウスピース専用にすることをお勧めします。
マウスピースを手に持ち、歯ブラシに少量の液体ハンドソープや食器用中性洗剤をつけて、優しくブラッシングします。力を入れすぎると傷がつく原因になるので注意しましょう。
ブラッシング後は水道水でしっかりとすすぎ、残った洗剤を完全に洗い流します。この方法は食べかすや唾液による軽度の汚れを落とすのに効果的です。
2. マウスピース専用洗浄剤の活用

より効果的に黄ばみを落とすなら、マウスピース専用の洗浄剤がおすすめです。市販の洗浄剤には、「歯科技工士が薦めるマウスピース洗浄剤 PRO ウォッシュ」などがあります。
使用方法は、水またはぬるま湯を入れた容器に洗浄剤を溶かし、マウスピースを指定時間(通常5〜15分程度)浸け置きするだけ。洗浄後は水でよくすすいでください。
専用洗浄剤は歯ブラシでは落としきれない汚れやステイン、黄ばみ、タンパク質汚れに効果的です。週に1〜2回の使用で、マウスピースを清潔に保つことができます。
3. 超音波洗浄機の使用
より徹底的に洗浄したい場合は、超音波洗浄機の使用がおすすめです。超音波洗浄機は、微細な振動によって汚れを浮かせて落とす家電製品で、眼鏡や貴金属の洗浄にも使われています。
水または専用の洗浄剤を入れて、マウスピースを5〜10分程度洗浄します。歯ブラシや洗浄剤だけでは落としきれない頑固な汚れや油汚れにも効果的です。
ただし、超音波洗浄機は他の方法に比べて価格が高めなので、日常的なケアというよりは、定期的な集中ケアとして活用するのがよいでしょう。

4. 重曹を使った自然派洗浄法
自宅にある材料で手軽にできる方法として、重曹を使った洗浄法があります。重曹は研磨作用と消臭効果があり、マウスピースの黄ばみや臭いを取るのに役立ちます。
小さな容器に水とティースプーン1杯の重曹を入れてペースト状にし、それを柔らかい歯ブラシにつけてマウスピースを優しくブラッシングします。その後、水でよくすすいでください。
重曹は自然由来の成分なので、化学物質に敏感な方にもおすすめです。ただし、研磨作用があるため、力を入れすぎるとマウスピースに微細な傷がつく可能性があるので注意が必要です。
5. クエン酸を活用した洗浄法
ミネラル成分の沈着による白い曇りには、クエン酸を使った洗浄が効果的です。レモン汁やクエン酸パウダーを水で薄めた溶液にマウスピースを10分程度浸け置きします。
クエン酸の酸性がミネラル成分を溶かし、白い曇りを取り除く効果があります。浸け置き後は水でよくすすいでください。
ただし、酸性の強い溶液に長時間浸けすぎると、マウスピースの素材を傷める可能性があるので、浸け置き時間は守りましょう。
マウスピースの黄ばみを予防するための3つの日常ケア
黄ばみを落とすことも大切ですが、そもそも黄ばませないための予防ケアはさらに重要です。日常的に取り入れやすい予防法を3つご紹介します。
これらの習慣を身につけることで、マウスピースを長く清潔に保つことができますよ。
1. 装着前後の歯磨きを徹底する
マウスピースを装着する前と外した後は、必ず歯磨きをしましょう。特に食事後にマウスピースを装着する前の歯磨きは非常に重要です。
歯に食べかすや飲み物の色素が残ったままマウスピースを装着すると、それらがマウスピースに転写され、黄ばみの原因になります。また、虫歯や歯周病のリスクも高まります。
歯磨きの際は、歯ブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシも併用し、隅々までしっかり汚れを落とすことが大切です。
2. 使用後は必ず洗浄する
マウスピースを外したら、すぐに洗浄する習慣をつけましょう。使用後そのままにしておくと、唾液中の細菌が繁殖し、黄ばみや臭いの原因になります。
まずは水でよく洗い流し、汚れや唾液を取り除きます。時間に余裕があれば、先ほど紹介した方法のいずれかで洗浄するとより効果的です。
洗浄後は柔らかい布で拭いて乾燥させることで、黄ばみを予防できます。週に1回程度、専用のクリーナーを使ってマウスピースを丁寧に洗浄することもおすすめです。
3. 適切な保管方法を守る
マウスピースを使用しないときは、専用のケースに入れて保管しましょう。直射日光や高温多湿の場所は避け、清潔な環境で保管することが大切です。
専用ケースも定期的に洗浄し、清潔に保ちましょう。ケースの中には防カビシートや乾燥剤を入れることで、より良い状態で保管できます。
また、マウスピースは濡れたままケースに入れると、細菌が繁殖しやすくなります。保管前にはしっかり乾かしてからケースに入れるようにしましょう。
マウスピースの黄ばみに関するよくある質問
患者さんからよく質問される内容について、歯科医としての知見をもとにお答えします。マウスピースの黄ばみに関する疑問を解消して、より効果的なケアにつなげていきましょう。
マウスピースはどのくらいの頻度で洗浄すべきですか?
マウスピースは毎日使用するたびに水洗いをし、週に1〜2回は専用洗浄剤などを使った集中ケアを行うのが理想的です。
日常的には、使用後に水で洗い流し、柔らかい布で拭くだけでも十分です。ただし、黄ばみや臭いが気になりはじめたら、専用洗浄剤や重曹などを使ったケアを行いましょう。
特に喫煙者の方や色の濃い飲み物をよく飲む方は、より頻繁に洗浄することをお勧めします。
市販の入れ歯洗浄剤はマウスピースに使えますか?
市販の入れ歯洗浄剤は、マウスピースの素材によっては使用できる場合がありますが、素材を傷める可能性もあるため注意が必要です。
特にポリカーボネート製のマウスピースには、入れ歯洗浄剤の使用は避けた方が無難です。マウスピース専用の洗浄剤を使うか、歯科医院に相談することをお勧めします。
どうしても入れ歯洗浄剤を使いたい場合は、短時間の使用にとどめ、使用後はしっかりとすすぐようにしましょう。
黄ばみがひどい場合、新しいマウスピースに交換すべきですか?
黄ばみがひどく、紹介した方法でも改善しない場合は、新しいマウスピースへの交換を検討する時期かもしれません。
マウスピースは使用期間が長くなると徐々に劣化し、黄ばみだけでなく変形や亀裂が生じることもあります。特に矯正用マウスピースは、定期的な交換が治療計画に組み込まれていることが多いです。
まずは担当の歯科医師に相談し、適切なタイミングでの交換を検討しましょう。
まとめ:日常ケアで清潔なマウスピースを維持しよう
マウスピースの黄ばみは、適切なケアによって予防・改善することができます。今回ご紹介した5つの洗浄方法と3つの予防ケアを日常生活に取り入れることで、マウスピースを長く清潔に保つことができるでしょう。
特に大切なのは、使用前後の歯磨きの徹底と、使用後すぐの洗浄です。これだけでも黄ばみの多くは予防できます。
もし黄ばみや汚れが気になる場合は、専用洗浄剤や超音波洗浄機などを活用してみてください。また、定期的に歯科医院を受診し、プロフェッショナルなクリーニングを受けることも効果的です。
マウスピースを清潔に保つことは、見た目の問題だけでなく、口腔内の健康を守ることにもつながります。日々のケアを大切にして、健康な口腔環境を維持していきましょう。
当院では、マウスピースの正しいケア方法や、お口の健康に関するご相談を随時承っております。お悩みがありましたら、お気軽にあおぞら歯科おとなこども矯正歯科までご相談ください。
著者情報
あおぞら歯科おとなこども矯正歯科 院長
小島 史雄

経歴
2017年3月 日本大学歯学部卒業
2017年~2025年 埼玉県越谷市 浅賀歯科医院 副院長勤務
2022年~2024年 千葉県柏市 柏いろは歯科おとなこども歯科 非常勤勤務
2025年 あおぞら歯科おとなこども矯正歯科
所属学会
日本口腔インプラント学会 専門医
日本歯周病学会
日本インプラント臨床研究会



