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歯石を放置すると起こる深刻なリスク
鏡で歯を見たとき、歯の根元に黄色や黒っぽい塊がついていることに気づいたことはありませんか。
「これは歯石かもしれない」と思いつつも、痛みがないからと放置してしまう方は少なくありません。しかし、歯石は単なる汚れではなく、お口の健康を脅かす深刻な問題を引き起こす原因となります。
日本では30歳以上の成人の約80%が歯周病にかかっており、歯を失う原因の第1位となっています。その背景には、歯石の放置があるのです。
この記事では、長野市の「あおぞら歯科おとなこども矯正歯科」院長として、多くの患者様のお口の健康を守ってきた経験をもとに、歯石を放置することで起こるリスクと、今日からできる予防対策について詳しく解説します。
歯石とは何か?歯垢との違いを理解する

まず、歯石の正体を正しく理解することが大切です。
歯石は「ただの食べカスが固まったもの」ではありません。実は、お口の中の細菌の死骸や生きた細菌が、唾液に含まれるカルシウムやリンなどのミネラル成分によって石灰化した「細菌の巣」なのです。
歯垢(プラーク)から歯石へ変化するメカニズム
歯石ができるまでには、段階的なプロセスがあります。
食事の後、4~8時間程度で歯の表面に歯垢(プラーク)が形成されます。この歯垢は約80%が水分で構成されており、残りの約20%が有機質、そのうちの70%が細菌で占められています。つまり、歯垢は水分を除くとほぼ細菌の塊なのです。
この歯垢を2日ほど放置すると、唾液中のカルシウムやリンが沈着し、石のように硬い「歯石」へと変化します。歯石になるまでには約2週間程度の時間を要しますが、一度形成されると、歯ブラシでは取り除くことができなくなります。
歯石と歯垢の決定的な違い
歯垢と歯石の最も大きな違いは、「硬さ」と「除去の難しさ」です。
歯垢は柔らかく、毎日の丁寧な歯磨きで除去できます。一方、歯石は約80%がリン酸カルシウムで構成されており、表面がザラザラとしています。このザラザラした表面には、さらに歯垢が付着しやすくなるという悪循環が生まれます。
舌で歯の表面を触ってみてください。ザラザラとした不快な感触があれば、それは歯石である可能性が高いです。歯ブラシでブラッシングしても除去できなければ、ほぼ間違いなく歯石と考えられます。
歯石を放置すると起こる症状の進行ステップ
歯石を放置した期間によって、お口の中は段階的に悪化していきます。
ここでは、放置期間ごとの具体的な症状の変化を解説します。自分の現在の状態と照らし合わせながら、読み進めてください。
放置1年~3年:初期段階のサイン
歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすくなります。
歯石そのものが直接悪さをするというより、歯石に付着した細菌が出す毒素によって、歯ぐきに炎症が起こります。これが「歯肉炎」と呼ばれる状態で、歯周病の初期段階です。
この段階では、歯ぐきが赤く腫れる、歯磨きの際に血が出る、歯ぐきがムズムズするといった症状が現れます。まだこの段階であれば、歯科医院で歯石を除去し、正しいブラッシングを行うことで、健康な歯ぐきに戻る可能性が非常に高いです。
放置5年~:中期段階のサイン

歯肉炎を放置すると、炎症は歯ぐきの奥深くまで進行し、「歯周病」へと悪化します。
歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなり、そこにまで歯石が付着し始めます。この段階になると、自覚症状もはっきりしてきます。口臭が強くなる、歯ぐきが下がり歯が長く見える、硬いものが噛みにくくなる、歯ぐきから膿が出ることがあるといった症状が現れます。
歯周ポケットの奥深くについた歯石は、もはやプロによる専門的な処置でしか取り除けません。治療には時間も回数もかかるようになります。
放置10年~:末期段階の深刻な状態
さらに歯周病が進行すると、歯を支えている顎の骨(歯槽骨)が溶かされ始めます。
歯の土台である骨が溶けてしまうと、歯は支えを失い、グラグラと揺れ動くようになります。この状態になると、食事をすることも困難になるでしょう。歯が常にグラグラしている、歯並びが変わってきた、最終的には歯が抜け落ちるといった深刻な症状が現れます。
歯石を10年放置したケースは意外に珍しくありません。歯石それ自体が強い病原性を持っているわけではないため、10年放置しても命に関わるような病気を引き起こすことは稀です。しかし、歯周病で顎の骨がボロボロになり、複数の歯に重度のむし歯が見られる状態となり、食べ物をしっかり噛むことさえ難しくなります。
歯石が引き起こす全身への影響
歯石の悪影響は、単に口腔内の問題に留まりません。
最新の研究により、歯周病が全身の健康にも深刻な影響を及ぼすことが明らかになっています。
糖尿病リスクが2.6倍に上昇
厚生労働省の調査によると、歯周病患者は糖尿病発症リスクが2.6倍高くなることがわかっています。
歯周病菌が産生する毒素がインスリンの働きを阻害し、血糖値のコントロールを困難にするためです。逆に、歯周病治療を行うことで血糖値の改善も期待できます。
心疾患・脳梗塞のリスク増大
歯周病菌は血管を通じて全身に運ばれます。
心筋梗塞の発症リスクは1.9倍、脳梗塞の発症リスクは2.1倍、誤嚥性肺炎の発症リスクは3.9倍高まることが判明しています。特にストレスと不規則な生活習慣により、これらの複合リスクを抱える方が増加しています。
妊娠中の歯周病が引き起こす問題
妊娠中の歯周病は、早産・低体重児出産のリスクを7.5倍高めることが報告されています。
これは喫煙やアルコールよりも高いリスク値です。妊娠を希望される方、妊娠中の方は特に注意が必要です。
当院の予防歯科で実践する対策

歯石を放置しないためには、予防が何より大切です。
当院では、患者様一人ひとりに合わせた予防プログラムを組み立て、生涯ご自身の歯を守ることを目標としています。
個別設計の予防メンテナンス
当院の予防歯科は「決まった処置をするだけ」ではありません。
年齢、生活習慣、歯並び、リスク因子などを丁寧に評価し、患者様ごとに最適なメンテナンスメニューを設計します。むし歯・歯周病のリスク評価、ホームケア状況のチェック、歯並び・噛み合わせの確認、定期的な検査と予防プランの見直しを行います。
「自分に必要な予防」を受けられることが、当院の最大の特徴です。
エアフロー(パウダーメンテナンス)を保険診療で提供
通常は自由診療で行うことが多いエアフロー(パウダーメンテナンス)を、当院では保険診療で提供しています。
エアフローは、鋭利な器具を使わず、歯や歯ぐきへのダメージが少なく、バイオフィルムや着色を短時間で除去できるという特徴があります。痛みが苦手な方やお子様にも人気の予防方法です。施術後は歯の表面がツルツルになるため、汚れの再付着も防ぎます。
セルフケアとプロケアの両立をサポート
むし歯や歯周病の多くは、毎日のセルフケアだけでは防ぎきれません。
そのため当院では、毎日の歯みがき(セルフケア)と専門的クリーニング(プロフェッショナルケア)の両立を徹底してサポートします。家でのケア方法、歯ブラシ・歯間ブラシの選び方、磨き方の癖まで細かくアドバイスします。
「家に帰ってから何をすればいいのか」が明確になるため、継続しやすい予防習慣が身につきます。
自宅でできる効果的な歯石予防対策
歯科医院での専門的なケアに加えて、ご自宅でのセルフケアも非常に重要です。
ここでは、今日から実践できる効果的な予防対策をご紹介します。
正しい歯磨き法「45度法」をマスターする
基本の磨き方は、歯ブラシを歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当てることです。
小刻みに振動させながら、1本ずつ丁寧に磨きます。力は150g程度(歯ブラシの毛先が広がらない程度)で、1回3分以上かけて磨くことが理想です。
おすすめの歯ブラシは、毛の硬さが「やわらかめ~ふつう」、ヘッドの大きさは「小さめ」(奥歯まで届きやすい)、交換頻度は1ヶ月に1回です。
デンタルフロス・歯間ブラシで徹底除菌
歯磨きだけでは、歯と歯の間の汚れは60%程度しか除去できません。
デンタルフロスは毎晩の歯磨き後に使用し、歯間ブラシは隙間の大きさに合わせてサイズを選択します。マウスウォッシュは殺菌効果のあるものを選択すると、より効果的です。
生活習慣の改善で歯周病菌を撃退
禁煙することで歯周病の危険性が4割も減ることが研究で明らかになっています。
ニコチンは歯ぐきの血流を悪化させ、免疫機能を低下させるため、歯周病のリスクを大幅に高めます。また、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理も、お口の健康維持に欠かせません。
定期検診で受けられる専門ケア
歯科医院での定期的なメンテナンスは、歯石の再蓄積を防ぐために不可欠です。
当院では、以下のような専門的なプロケアを提供しています。
PMTC(プロによる徹底クリーニング)
歯科医師・歯科衛生士が専用機器で、歯ブラシでは落ちない汚れやバイオフィルムを除去します。
歯面がなめらかになるため、汚れの再付着も予防できます。施術後は「歯が気持ちいい」と実感していただける体験です。
スケーリング(歯石除去)
歯周病の原因となる歯石を専用器具で徹底除去します。
初期の歯周病改善にも有効です。歯科衛生士がスケーラーを用いて歯石を除去し、知覚過敏や下の前歯の部分など痛みを感じやすい箇所は、ハンドスケーラーで丁寧に取り除きます。
フッ素塗布で歯質を強化
お子様だけでなく大人のむし歯予防にも効果的です。
エナメル質を強化し、初期むし歯の修復も期待できます。定期的なフッ素塗布により歯面の石灰化を促進し、むし歯になりにくい歯質を作ります。
3ヶ月に1回のメンテナンスが理想
痛みがなくても3ヶ月に1回は検診を受けることが重要です。
スウェーデンの研究では、重度の歯周病を治療した患者様を14年間にわたり定期的にメンテナンスしながら経過を観察したところ、治療後も定期的に通っていた多くの患者様は、歯周病が再発せず、歯も抜けずにすんだことが明らかになっています。
歯周病は「再発しやすい病気」であり、治療後のメンテナンスが本番なのです。
まとめ:予防は「治療しない未来」への投資
歯石を放置すると、歯肉炎から歯周病へと進行し、最終的には歯を失うだけでなく、全身の健康にも深刻な影響を及ぼします。
しかし、むし歯や歯周病は、ほとんどが予防で防げる病気です。悪くなる前に定期的にお口の状態を整えることで、将来の治療費や痛みのリスクを大幅に減らすことができます。
あおぞら歯科おとなこども矯正歯科では、「削らない・抜かない未来」をつくるための予防歯科を大切にしています。個別設計の予防メンテナンス、エアフローを保険診療で提供、セルフケアとプロケアの両立サポートなど、患者様一人ひとりに合わせた予防プログラムをご用意しています。
「歯が痛くなってから行く場所」ではなく、「健康を守るために定期的に通う場所」として、ぜひ当院をご活用ください。
あなたの歯を一生守るために、今日から予防習慣を始めませんか。
長野市の「あおぞら歯科おとなこども矯正歯科」では、患者様の予防歯科を全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
著者情報
あおぞら歯科おとなこども矯正歯科 院長
小島 史雄

経歴
2017年3月 日本大学歯学部卒業
2017年~2025年 埼玉県越谷市 浅賀歯科医院 副院長勤務
2022年~2024年 千葉県柏市 柏いろは歯科おとなこども歯科 非常勤勤務
2025年 あおぞら歯科おとなこども矯正歯科
所属学会
日本口腔インプラント学会 専門医
日本歯周病学会
日本インプラント臨床研究会



