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スケーリングとは?歯周病予防の基本となる治療
歯科医院で「スケーリング」という言葉を耳にしたことはありますか?
スケーリングとは、歯の表面に付着した歯石を専用の器具で取り除く処置のことです。歯石は硬化したプラーク(歯垢)で、歯ブラシでは取り除くことができません。そのため、専門的な処置が必要になります。歯石は表面がざらついていて汚れが付きやすく、放置しておくと細菌が増えやすい環境ができあがります。その結果、むし歯や歯周病のリスクが上昇してしまうのです。
スケーリングは、歯の表面を清潔に保つために欠かせないプロセスです。口内の健康を維持するための基盤となります。歯周病は、成人が歯を失う最も多い原因のひとつです。日本の40歳以上では半数以上に認められ、患者の割合は年齢とともに増加していきます。
歯周病と糖尿病は密接に関連しており、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。つまり、スケーリングは単なる歯石除去ではありません。全身の健康にも影響を与える重要な治療なのです。
スケーリングで使用される器具と治療方法

スケーリングでは「スケーラー」という道具を使用して歯石やバイオフィルム(細菌の膜)を除去します。
スケーラーには様々な種類があり、主に「ハンドスケーラー」「超音波スケーラー」「エアスケーラー」の3つに分かれます。私たち歯科衛生士は、これらのスケーラーをうまく使い分けながら、丁寧に痛みのないように除去することを心がけています。
ハンドスケーラー:精密な操作が可能
ハンドスケーラーは、手動で歯石を削り取る道具です。精密な操作が可能で、細かい部分の歯石除去に適しています。特に歯間や歯茎の際などの細かい部分のクリーニングに効果的です。歯科衛生士の指先の感覚を頼りに、一本一本手作業で歯石を取り除くため、歯周ポケットの奥深くや、歯の根の複雑な形状に沿った部分の歯石を確実に除去することができます。
超音波スケーラー:効率的な歯石除去
超音波スケーラーは、超音波による高速振動を利用して歯石を粉砕する機器です。短時間で広範囲の歯石を除去できるため、効率的なクリーニングが可能になります。超音波スケーラーは、振動による微細な動きで歯石を砕くため、歯面を傷つけることなく歯石を除去することができます。
また、超音波スケーラーには水を噴射する機能があり、クリーニング中に歯石やプラークを洗い流すことができます。歯の表面や歯周ポケットの比較的浅い部分の歯石を効率的に除去する際に使用しています。
エアスケーラー:患者様の負担を軽減
エアスケーラーは、空気の圧力による高速振動を利用して歯石を粉砕する道具です。患者様の負担が少なく、快適にスケーリングを受けることができます。特に歯石が少ない場合や、軽度のクリーニングが必要な場合に効果的です。空気の圧力を利用するため、手用スケーラーや超音波スケーラーと比べて刺激が少なく、痛みを感じにくいのが特徴です。
スケーリングとルートプレーニングの違い
歯石取りには「スケーリング」と「ルートプレーニング」があります。
これらは頭文字をとって、SRPと略されることがあります。スケーリングは歯の表面のクリーニングを指しますが、ルートプレーニングは歯根の滑らかさを取り戻すための処置です。ルートプレーニングでは、歯周ポケットの中にある歯根表面を滑らかにし、歯茎が歯に付着しやすくします。
これにより、歯周ポケットの細菌を除去し、健康な歯茎の再生を促すことができます。ルートプレーニングは主に中等度の歯周病で必要とされる処置です。歯周病が進行している場合、歯の根の表面が細菌の出す毒素でデコボコになり、歯石が付着しやすい状態になっています。このデコボコになった根の表面を専用の器具で滑らかに磨き上げ、細菌の再付着を防ぐのがルートプレーニングです。
歯周病の進行度合いに応じて、歯科医師がこれらの処置を適切に判断し、使い分けることで、より効果的な歯周病治療が可能になります。
スケーリングによって得られる効果

スケーリングによって得られる効果は、口内環境の改善と歯周病予防の2つが主なものです。
口内環境の改善
スケーリングにより、歯石やプラークが除去されると、口内環境が大幅に改善されます。口内環境が改善されることで、歯肉の炎症が減少し、口臭の原因となる細菌の繁殖を防ぐことができます。歯周病は、歯石に付着した細菌が放出する毒素によって、歯ぐきに炎症を引き起こします。
スケーリングによってこの歯石が物理的に除去されると、炎症の原因が根本からなくなるため、歯ぐきは徐々に回復に向かいます。その結果、歯磨き時の出血や慢性的な腫れが改善し、健康的な薄いピンク色へと変化していくのです。これは、細菌という「敵」がいなくなったことで、歯ぐきの免疫システムが正常に機能し始めるためです。
歯周病予防と全身への影響
定期的なスケーリングは、歯周病の予防に非常に効果的です。歯周ポケット内の細菌が減少し、歯周病の進行を防ぐことができます。歯周病は、歯茎の炎症や出血、歯の喪失などの症状を引き起こす可能性がありますが、スケーリングを行うことで、これらのリスクを大幅に軽減することができます。
また、スケーリングにより歯周ポケットが浅くなり、歯と歯茎を健康な状態に保つことができます。出血や膿を出しているような歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されています。中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケット表面積の合計は掌(てのひら)と同じ程度と考えられています。
ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします。そのため、糖尿病が発症・進行しやすくなります。つまり、スケーリングは口内だけでなく、全身の健康にも影響を与える重要な治療なのです。
セルフケア効果の向上
歯石は表面がザラザラしており、歯垢(プラーク)が非常に付着しやすい状態です。このため、歯石がある状態では、どんなに丁寧に歯磨きをしても、歯垢を完璧に除去することは困難でした。スケーリングによって歯石が除去された後の歯の表面は、ツルツルで滑らかになります。
この状態になると、日々の歯磨きで歯垢を効率よく落とせるようになり、セルフケアの効果が格段に向上します。スケーリングは、あなたが日頃行う歯磨きの質を高め、歯周病の再発を防ぐための強力なサポートとなるのです。
スケーリングを行った際の注意点

スケーリングを行った際には、いくつかの注意点があります。
これらは一時的な症状であり、ほとんどの場合心配する必要はありません。ただし、症状が続くようであれば受診するようにしてください。
知覚過敏になりやすい
スケーリングを行うことで、今まで歯石で覆われていた部分が露出し、歯がしみることがあります。症状は一時的ですが、歯の表面が敏感になっているため、治療後は冷たいものや熱いものを口にするのはなるべく避けるようにしましょう。知覚過敏の症状は通常数日から1週間程度で改善していきます。
出血することがある
歯石を取り除くことで、歯茎から出血する場合があります。これは、歯茎の炎症部分を刺激して出血させてしまうことがあるためなので、心配する必要はありません。出血はすぐ止まりますが、治療後は毛先の柔らかい歯ブラシでなるべく優しく磨くようにしましょう。
歯茎が下がって見える
歯石を除去すると、治療前より歯茎が下がって見えることがあります。実際は歯茎が下がったのではなく、今まで歯石で覆われていた部分が露出したことによって、歯茎が下がったように見えるのです。このように見えるのは本来の正常な状態に戻った証であるため、心配する必要はありません。
歯と歯の隙間が目立つ
スケーリングを行うと、歯と歯の隙間が目立つことがあります。これは、歯の隙間にたまっていた歯石を除去したことで、本来の状態に戻ったことを意味しています。歯を削ってできた隙間ではないので安心してください。
スケーリングの適切な頻度と定期メインテナンス
スケーリングの頻度は3〜6か月に1回が適切です。
ただし、過去に歯周病になったことがある方や歯石がつきやすい方は、1〜2か月に1回の受診をオススメしています。一旦治療が終了しても、歯周病は再発することが多いため、「メインテナンス」もしくは「サポーティブセラピー」と呼ばれる定期的なチェックとケアを行っていくことが必要です。
患者さん自身によるプラークコントロールが基本となりますが、その上で歯科医院で定期的に受診を行い、歯周ポケットの中に付着しているプラークや歯石を超音波振動機器や手用器具を用いて取り除きます。これは「スケーリング」といい、歯科医療従事者が行う重要なプラークコントロールです。
治療ではまずブラッシング指導により患者さん自身でプラークを取り除けるような練習を行います。プラークを形成する細菌が歯肉で引き起こしている炎症を減らすのが目的で、これは「プラークコントロール」と呼ばれ、歯周病治療の中心となります。
あおぞら歯科おとなこども矯正歯科の予防歯科

当院では、スケーリングを含む予防歯科に力を入れています。
むし歯や歯周病を「発症してから治す」のではなく、「発症させないための予防」を診療の土台に置いています。予防歯科のコアとなる考え方は「見える化 → 習慣化 → 再発予防」という3ステップです。
見える化:現在の口腔状態を共有
初診時に現在の口腔状態やリスクを共有し、将来の変化も含めて説明します。プラーク染め出しと写真共有により、みがき残し傾向を家族で確認することができます。ご自身の口腔状態を「見える化」することで、予防の重要性を実感していただけます。
習慣化:家庭でのケアを個別最適化
家庭でのケア(ブラッシング・補助清掃具の選択)を個別最適化し、「できる」を増やす指導を徹底しています。ホームケア処方箋として、歯ブラシ・フロス・歯間ブラシのサイズを個別処方し、生活Tipsカードで間食のタイミング、就寝前ケア、装置お手入れの要点を1枚にまとめています。「やること」が明確になると、お子さんも「できた」が増える――これが予防継続のコツです。
再発予防:定期メインテナンスで継続支援
定期メインテナンスでバイオフィルム管理・噛み合わせチェック・生活習慣の見直しまで継続支援しています。仕事・学校・部活動・送迎といった日常の動きを出発点に、無理のない来院間隔とホームケア(歯ブラシ+補助清掃具)を組み合わせます。たとえば「学期ごと」「大型連休前後」「人間ドックの前」など、家族のカレンダーに紐づく受診タイミングを提案しています。
まとめ:スケーリングで健康な歯を保ちましょう
スケーリングは、歯周病予防に欠かせない重要な治療です。
歯石を除去することで、口内環境が改善し、歯周病のリスクを大幅に軽減することができます。また、スケーリングは全身の健康にも影響を与え、糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながります。定期的なスケーリングと日々のセルフケアを組み合わせることで、生涯自分の歯で食べられる口腔環境を目指すことができます。
当院では、お子さんのむし歯ゼロ、再治療を減らす精密な治療、生涯自分の歯で食べられる口腔環境をめざしています。ひとり一人の状態を共有し、生活に合った計画を立てて伴走していきます。スケーリングを含む予防歯科について、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
著者情報
あおぞら歯科おとなこども矯正歯科 院長
小島 史雄

経歴
2017年3月 日本大学歯学部卒業
2017年~2025年 埼玉県越谷市 浅賀歯科医院 副院長勤務
2022年~2024年 千葉県柏市 柏いろは歯科おとなこども歯科 非常勤勤務
2025年 あおぞら歯科おとなこども矯正歯科
所属学会
日本口腔インプラント学会 専門医
日本歯周病学会
日本インプラント臨床研究会



